「勉強しなければいけないのは分かっている。でも、やる気が出ない」
そんな状態で、机に向かうのはつらいものです。保護者の方も、声をかけなければ始めない様子を見て、このままで大丈夫なのかと心配になるでしょう。
ただ、はじめからやる気がなくても、当たり前だと思っています。
まだ、勉強を通じて「自分が進歩している」という感覚をつかめていないのかもしれないからです。
できなかったことが、できるようになる。昨日は何も分からなかった問題が、今日は自分の力で解ける。その面白さを知ると、勉強との付き合い方が変わってきます。
ゲームでも、できることが増えたり、前は勝てなかった相手に勝てたりすると、またやりたくなります。勉強でも、そういう感覚をつくっていきたいのです。
ところが、勉強時間や、宿題を終わらせることばかり意識していると、自分の変化には気づきにくくなります。
一時間机に向かっていた。問題集を三ページ進めた。それだけでは、何ができるようになったのか、本人にもよく分からないことがあります。
欲しいのは頑張った実感ではなく、進歩した感覚です。
そこで大切にしたいのが、小さく自分をテストしていくことです。
例えば、英単語を五つ覚えるなら、次のように進めてみます。
- まず、何も見ずに五つの単語を書いてみます。
- 答え合わせをして、書けなかった単語を確認します。
- その単語を覚え直します。
- 答えを隠して、もう一度テストします。
- 最初と比べて、いくつ書けるようになったかを確かめます。
最初は二つしか書けなかったのに、次は四つ書けた。
それなら、この時間で二つできることが増えたと分かります。まだ一つ間違えていても、進歩した事実はなくなりません。
「あと一つも覚えてみようかな」と思えたら、その気持ちを大切にすればよいのです。
数学なら、解説を読んだあとに閉じて、自分で解き直してみます。解けたら、数字を変えた同じ種類の問題にも挑戦します。そこで解ければ、答えを覚えていただけではなく、解き方も身についてきたと確かめられます。
最初から大量の問題を用意する必要はありません。今の自分が取り組める範囲で、変化が分かるくらい小さく始めれば十分です。
また、一度できたことでも、翌日には忘れているかもしれません。だから、翌日にも短く確かめてみます。忘れていたところを覚え直し、少しずつ自分の力にしていきます。
「やる気を出しなさい」と言われても、やる気の出し方が分からなければ困ってしまいます。
それなら、まずは一問、自分の力でできることを増やしてみる。その変化を、小さなテストで目に見える形にしてみる。
勉強が好きになるきっかけは、案外そういうところにあると思っています。
授業でも、生徒の答えや考え方を見ながら、どこでつまずいているのかを探ります。そして、必要な練習や問いかけを通じて、本人が自分の進歩に気づけることを大切にしています。
最初からやる気に満ちていなくても大丈夫です。
まずは、「さっきできなかったことが、今はできる」という感覚を、一緒につくっていきましょう。